ITでマネタイズ?『音声合成ソフトウェア』で稼ぐ仕組み&ビジネスモデル領域わかり易く解説

マネタイズ手法

本ブログでは企業前線で本業(研究、開発、営業、サービス、スタッフ業務等)に従事しながらも、その本業をスムーズ進めるために、専門外のマーケティング、特にITに係るマネタイズ、ビジネスモデルも考えなけれぱならない方々への情報支援をしております。

今回はIT分野で多様な使い方と進化を続ける『音声合成ソフトウェア』の収益の仕組みとビジネスモデル領域(どの様にして、何処で稼げるのか)についてわかり易くご説明します。

本ブログでは『ビジネスモデル』は「価値を提供して収益を上げる仕組み」、『マネタイズ』はその中核にある「収益化」部分と捉えてご説明します。例えばGoogleの『ビジネスモデル』は「検索サービス」の「価値提供」と「広告連動」の『マネタイズ(収益の仕組み)』から構成されていると見ることができます 。  

1. 音声合成ソフトウェアの価値

ここでは収益の源となる3つの提供価値をご説明します。

1-1 高品質な音声の価値

本物の人間やプロの声優に近い、自然で合成音声と判別が困難な人間らしい音声は、音声合成を提供する側の諸々の負担(人的リソース、コスト、時間等)を軽減し、更にユーザー側(企業、個人)の体験形態を大幅に向上させます。特に、感情表現豊かな音声や、特定の声優・キャラクターの音声をデジタル技術で自由度高く創出し再現できるメリットは、エンターテイメント分野で高い価値を持ちます。

1-2 多様な用途への対応の価値

同じく音声合成ソフトウェアは、簡単なデジタル操作で読み上げ、ナレーション、音声アシスタント、ゲーム、教育など、幅広い用途に対応できます。特に音声合成を提供する側は多様なニーズに素早く応えることで、新規市場の創出や既存市場の拡大ができます。

1-3 ビジネス性(稼げる)価値

ビジネス性については下記メリットとデメリットを比較衡量し、トータルメリットがあれば、その音声合成ソフトウェアの(収益モデルとしての)価値があると言えます。

a) メリット

  • コストメリット:音声合成により、毎回肉声収録(音源確保)の必要なく音声データ(肉声であれ合成音であれ)の調達コストが削減され、またクラウドサービスやAIなどの自動化技術と連動、連携することで、ユーザーへ(使える状態のまま)提供するコストが削減できます。
  • 社会的メリット:上記のコストメリットから視覚障碍者や言語障碍者など、情報へのアクセスが困難な人々をより多く支援できアクセシビリティ向上による社会インフラとしての価値が高まります。
  • 体験的メリット:バーチャルYouTuberや音声ゲームなど、これまで(技術面、コスト面で)できなかった新しいエンターテイメント体験を提供できます。

b) デメリット

  • コスト的課題:より自然で魅力的な音声合成を実現するためには、高度で継続的な技術研究開発が必要となります。
  • 倫理的課題:肉声と判別困難な品質とAI活用による音声合成利用の普及で、なりすましや偽情報の拡散など、倫理的な課題を引き起こす可能性があり、社会的価値を下げるリスクがあります。
  • 著作権の課題:有名人の声などの無断で使用や、既存の法制度のカバーできないAI活用(突然の音源使用や許諾のない配布形態等)による著作権侵害とその訴訟対応リスクが高まる可能性があります。

まとめ

音声合成ソフトウェアは、高品質な音声、多様な用途への対応、ビジネス性の3つの価値を提供します。これらの価値を最大化することで、デメリットを凌駕し、社会にも貢献することで、収益を上げることができます。

2. マネタイズに係るステークホルダー(利害関係者)

ここではマネタイズに係るステークホルダーを分類します。それぞれの立ち位置や相互の関係性、市場での力関係等が反映され、各人の収益モデルが定まります。

2-1 ユーザー/顧客(使用者)

音声合成ソフトウェア又はそれを利用する為のハードウェアを最終的に使用する人々(個人ユーザー、企業、教育機関、公共機関など、幅広いユーザー層)が考えられます。用途やニーズに応じて、高品質な音声、多様な音声バリエーション、使いやすさなどを求めますが、特に供給側からは直接働きかけられない場合が多いので、彼らの存在と(自社ターゲット層の)夫々のニーズ(音声合成に求める価値)は常に把握して置かなければなりません。

2-2 ハードウェアメーカー(導入者)

スマートスピーカー、カーナビ、ゲーム機など、音声合成機能を搭載した機器を製造・販売します。自社製品の付加価値を高めるために、それぞれのニーズ(自社のターゲットユーザー)に合った音声合成ソフトウェアを求めます。個性的で高品質なものから、自社サービス提供に最低限必要な一定品質があれば、コスト重視等様々あります。ここでは音声合成の導入視点で大きく組込み系とクラウド系に分けて言及します。

a) 組み込み系ハードウェアメーカー

  • 特徴:
    • 音声合成ソフトウェアをハードウェアに直接組込みアプリケーションとして提供。
    • ネットワーク接続がない、または不安定な環境でも音声合成機能を利用可能。
    • リアルタイム性が求められる場面(例:ゲーム、カーナビ)に適している。
    • ハードウェアリソースの制約があるため、軽量で効率的な音声合成ソフトウェアが求められる。
  • ハードウェア製品例:(通信環境がない又は不安定な使用環境を含む)
    • ゲーム機:ゲームキャラクターの音声、ナビゲーション音声など。
    • カーナビ:経路案内、交通情報、警告音など。
    • デジタルサイネージ:広告、案内、緊急情報など。
    • 産業用機器:工場のアナウンス、操作ガイダンスなど。
    • IoT機器:スマート家電、音声アシスタント搭載機器など。
  • 求められる要素:
    • 省リソース性:限られたハードウェアリソースで動作する軽量なソフトウェア。
    • リアルタイム性:遅延の少ない高速な音声合成。
    • 安定性:長時間稼働でも安定した動作。
    • カスタマイズ性:製品の特性に合わせた音声の調整。

b) クラウド系ハードウェアメーカー

  • 特徴:
    • 音声合成機能をクラウド経由で利用する。
    • 常に最新の音声合成技術を利用可能。
    • 豊富な音声データや多言語対応など、多様な機能を利用可能。
    • ネットワーク接続環境が必要。
    • 比較的高負荷な音声合成処理が可能。
  • ハードウェア製品例:
    • スマートフォン:音声アシスタント、読み上げ機能、翻訳機能など。
    • スマートスピーカー:音声アシスタント、音楽再生、情報提供など。
    • タブレット端末:電子書籍の読み上げ、オンライン学習など。
    • クラウド連携型ゲーム機:オンラインゲームの音声チャット、リアルタイム翻訳など。
    • 各種サービス端末
  • 求められる要素:
    • ネットワーク接続性:安定したネットワーク環境での利用。
    • クラウド連携:クラウドサービスとのスムーズな連携。
    • 低遅延性:クラウドとの通信遅延を最小限に抑える。
    • セキュリティ:音声データの安全な送受信。

c)共通

冒頭の通りハードウェアメーカーは製品特性やターゲットユーザーに応じて、最適な音声合成の導入方法を選択しますが、組み込み系では省リソース性やリアルタイム性が重視され、クラウド系では多様な機能や最新技術が重視されます。また、コスト、サポート体制、開発期間なども重要な共通要素となります。

2-3 ソフトウェアベンダー(供給者)

音声合成ソフトウェアを提供する企業や団体です。彼らは自社ソフトの機能的価値を提供し、その対価として、ライセンス料やサポート料の形で収益を得ます。収益モデル別に3種のベンダーに分類することができます。

a) ミドルウェアベンダー

  • 音声合成エンジン、音声データなどを開発・提供します。

b) アプリケーションベンダー

  • 音声合成を活用したアプリケーション(例:音声アシスタント、読み上げソフト)を開発・提供します。

c) システムベンダー(システムインテグレーター)

  • 音声合成システムを構築し、顧客に提供します。

d)共通

  • それぞれに技術力、開発力、サポート体制などが重要です。

2-4 ソフトウェア開発者・研究者(作成者)

音声合成ソフトウェアを開発するプログラマーやエンジニア、研究者たちです。彼らが高品質なソフトウェアを開発することで、それを導入する製品やサービスの品質や機能性が向上し、ユーザーニーズに合った製品を提供に繋がります。彼らは基本的にハードウェアメーカーかソフトウェアプロバイダーに所属していて個人的には給与(場合によってはインセンティブ的収入)を得ます。またその成果物(コア)である音声合成エンジンのマネタイズ手法には彼らの投入リソース(作業ボリューム、技術力、技術分野等)が影響します。それら投資の回収含め長期的収益が見込める(ライセンス)継続的な機能価値があるのか、それとも市場価値的に見て短期収益(買取)で終わらせるか、などが考慮されます。

2-5 知財戦略エキスパート(支援者)

色々なソフトウェアの価値最大化の為の戦略に関わったり、主に企業系顧客と交渉を担う知的財産権の専門家たちです。機能的価値の高いソフトウェアでも戦略や交渉を誤ればマネタイズに失敗したり、逆に優位性がさほどなくても運用に成功すれば会社に最大限の有益をもたらしたりもする重要なスタッフです。特に音声合成ソフトウェアには、技術に関する特許、著作権の他に音源(肉声)提供者の肖像権等に係る条件折衝も多く、また時間もかかります。このグループはハードウェアメーカーやソフトウェアベンダーに所属するか、独立系法律事務所として大手企業と連携するパターンが見られますが、多くはスタッフ作業としての対価のみで、ビジネスモデルの成果に係るインセンティブ(成功報酬)には絡みません。

2.6 音源供給者(権利者)

音源提供者(権利者)は、音声合成において非常に重要なステークホルダーであり、その権利保護と適切な利益が求められます。高品質な音声合成を実現するためには、多様で豊富な音源が不可欠であり、音源提供者はその根幹を担います。具体的には自身の声やその音源に関わる権利を持つ個人または団体を指し、声優、ナレーター、歌手、一般の個人、その親族(例えば著名な故人の配偶者や家族)や専属事務所などが含まれます。特に、有名人の声や特定のキャラクターの声は、音声合成コンテンツの魅力を大きく左右しますが、一部のスター的な声主を除けば、殆どは買取(権利移転)され、継続的収入確保は難しいのが現状です。更に近年のIT技術の著しい進展で一般人でも簡単に音源提供者になりうるのでステークホルダーとしての地位は現状はそれほど強いものではありません。

2-7 政府機関(規制者)

色々なソフトウェアが安全性、セキュリティ上の問題に関わる場合、政府機関はその規制に関与することがあります。政府機関が各種ソフトウェアの規制やガイドラインを強化することで、ソフトウェア開発者や提供者は規制に適合するためのコストが発生する可能性があります。逆にルール変更により新たな収益モデルの出現もあり得ます。特に音声合成ではAIの普及により音源提供者(著名人や声優等)の諸権利(生活権や肖像権等)保護の声が以前(音声合成黎明期)より高まっており、プライバシー保護を考慮した国内外政府の動向に注意を払う必要があります。

まとめ

音声合成ソフトウェアのマネタイズには、多様なステークホルダーが関わります。それぞれのニーズや役割を理解し、連携することが重要です。

3. 音声合成ソフトウェアのビジネス領域

ここでは音声合成ソフトウェアがビジネスモデルとして収益の仕組みに組み込まれる領域をご紹介します。基本的にはどの領域でも、ソフトウェア本来の機能的な提供価値がなくなる事はありませんが、ある業態での標準環境(OSやブラットフオーム)に取り込まれてしまったり、フリーの音声合成ソフトの品質向上により有償で使用する価値が落ちたりして、マネタイズ(収益モデル)が変わることは頻繁に起こります。それを回避する為には、常に前章での機能的価値を高めておく必要があります。

3-1 ネットワーク領域

クラウドベースの音声合成API、音声データ配信サービスなど。

3-2 クラウド・データセンター領域

音声合成サーバー、音声データストレージなど。

3-3 共通的機能領域

音声合成エンジン、音声処理ミドルウェアなど。

3-4 端末機器領域

スマートスピーカー、カーナビ、ゲーム機、スマートフォンなど。

3-5 コンテンツサービス領域

音声コンテンツ配信、音声広告、音声ゲーム、オーディオブックなど。

まとめ

音声合成ソフトウェアは、ネットワークから端末機器、コンテンツサービスまで、幅広いビジネス領域で活用できます。

4. 音声合成ソフトウェア提供価値カテゴリ

ここでは音声合成ソフトウェアが価値提供できる代表的な機能カテゴリをご紹介します。それぞれのカテゴリで求められる機能(1章の提供価値)の中で、自社の音声合成ソフトは下記のどの価値が提供出来て、(2章の)ソフトウェアベンダーから提供され(3章の)ステークホルダーにより導入、使用され、それぞれがそれぞれの形態で収益を得ます。

  1. 高品質な音声合成エンジン:人間の肉声感、人間にできない発話や歌がうたえる等
  2. 多様な音声データ:声優、キャラクターの選択肢が多い、多言語対応等
  3. リアルタイム音声合成:自然な発音、イントネーションの(言語辞書)完成度
  4. 感情表現豊かな音声合成:自然さの程度、感情調整の手間
  5. カスタマイズ性:声質、話し方
  6. 使いやすさ:企業ユーザーへのAPI、SDK(導入のしやすさ&開発のし易さ)
  7. サポート体制:企業ユーザーへの技術サポート、コンサルティング等

5. マネタイズ(収益)形態

音声合成ソフトウェアのマネタイズ形態とその契約パターンをご紹介します。基本的にはどのソフトウェアにも共通する要素がありますが、音声合成ソフトウェアの収益(契約)形態は、技術の進化や市場のニーズに合わせて多様化していますので、その音声合成の特殊性(声優や一般人の肉声利用、AIとの連携)を考慮し、以下のような契約形態が想定されます。

5-1 使用許諾(ライセンス)型

  • 特徴:
    • ソフトウェアを使用する権利を最も有利な提供条件で個別のライセンス契約を締結して収益を得るパターンです。
    • 提供者(開発者や開発ベンダー)の機能的な提供価値が高い場合によく選択されます。
    • 導入者やユーザーは契約条件の使用料(ライセンスフィー)を支払います。
    • 大きく分けて、組み込まれた商品の販売数量を基に支払われるピースロイヤリティ型、数量に基づかない定額払い型、一括払いで無期限使用できる買取型があります。
    • 提供ソフトがそのまま使えるわけでなく、導入者側には実装技術が求められます。
  • 音声合成ソフトの場合:
    • 音声合成エンジン(SDK、API)、音声データ、音声合成モデルなどのライセンス提供。
    • ピースロイヤリティ型:ゲームやアプリのダウンロード数、音声コンテンツの再生数などに応じて課金。
    • 定額払い型:利用期間やユーザー数に応じて課金。
    • 買取型:音声合成エンジンや音声データを買い切りで提供。
    • 声優や一般人の肉声を使用した音声データの場合、肖像権や著作権に関する契約を個別に締結。
    • AI音声合成モデルの場合、今後倫理的な利用に関する契約締結が想定される。

5-2 サブスクリプション型

  • 特徴:
    • プロバイダー(提供者)が予め設定した定期支払条件に基づいて導入者やユーザーにソフトウェアの使用権を提供することで収益を得る方法です。
    • 特定のサービスをダウンロードアプリケーションで提供する場合によく見られるパターンです。
    • 基本的には使用者側に条件折衝の余地はなく、使用者は支払条件に同意することで提供ソフトウェアをそのまま利用できます。
  • 音声合成ソフトの場合:
    • クラウド型音声合成APIサービス、音声データ配信サービス、AI音声クローンサービスなどを月額または年額で提供。
    • 利用量に応じた従量課金、定額制など、柔軟な料金プランを提供。
    • 常に最新の音声合成技術や音声データの提供&利用可能。
    • APIの利用に加えて、音声データのクラウドストレージや、音声編集ツール等の付加価値サービスを加えて、月額課金とする。

5-3 サービス・サポート提供型

  • 特徴:
    • ソフトウェアの使用だけでなく、サポートやメンテナンスなどのサービスも含めて提供することで全体収益を確保する方法です。
    • 一般的に機能的な価値がそれほど高くなく、使用権だけでは収益化が難しい場合によく見られるパターンです。
    • 導入者、ユーザーは提供ソフトの運用の利便性、サポート力を含めたトータル価値に対して支払います。
  • 音声合成ソフトの場合:
    • 音声合成システムの構築、カスタマイズ、保守などのサービスを提供。
    • 音声データ作成代行サービス、技術サポート・コンサルティングなどを提供。
    • AI音声を用いた、動画コンテンツ、オーディオコンテンツ等の制作。

5-4 プロジェクト・開発受託型

  • 特徴:
    • プロバイダーが元々保有するソフトの技術的価値を提供するのではなく、導入者、ユーザーの要件に基づいて、保有ソフトウェアをカスタマイズするプロジェクト(開発)を受託することで収益を得る方法です。
    • この場合、基本的には使用権(ライセンス)を許諾する形態でなく、成果物納品(権利移転)の形態をとります。
    • 提供ソフト形態に限定されない、システムインテグレータ(Sier)でよく見られるパターンです。
  • 音声合成ソフトの場合:
    • 特定用途向け音声合成開発、音声合成AIモデル開発、音声合成関連の研究開発などを請け負います。
    • 顧客の要望に合わせて、音声合成エンジンや音声データをカスタマイズします。
    • 特定の声質を再現するAI音声合成モデルの開発します。

6. まとめ

本テーマのお持ち帰り(Takeaway)は下記の通りです。

  1. 音声合成ソフトウェアには3つの価値と収益モデルがある。
  2. 音声合成ソフトウェアの7つのプレーヤー(利害関係者)がいる。
  3. 音声合成ソフトウェアの5つのビジネスモデル領域がある。
  4. 音声合成ソフトウェアの提供価値には10機能ある。
  5. 音声合成ソフトウェアの4つのマネタイズ(契約)形態がある。

これらのポイントを踏まえ、音声合成ソフトウェアのビジネスモデルを検討することで、より効果的な企業戦略を立てることが可能となります。

御礼🔶あとがき

今回も、お忙しい中、最後までご覧いただき大変ありがとうございました。今後も現業でお忙しい傍ら、専門外のマネタイズやビジネスモデルを考えなければならない方々にわかりやすい情報提供に努めてまいりますので、引き続きご愛顧のほど宜しくお願い致します。🔶Gold🔶R70228.v3b.0a.1a/+250301

タイトルとURLをコピーしました